very sick dog Part 3 トレードマーク

薬も受け付けなくなったトレードマークであったが、強引にシリンジでチキンコンソメに溶いた薬を口の中に流し込んだ。嘔吐が止まらなければ点滴で薬を入れるしかない、しかも点滴で投薬するとなったらば最悪の事態も免れない、と覚悟していたが、幸運なことに薬を嘔吐することはなかった。


文字通りの寝ずの看病。
消化管からの出血は止まった。(かのように見えた。)
でも出血が止まったのか、内出血状態なのかはわからない。
多臓器不全だとしたら、いっせいに内出血するのかもしれない。

呼吸は弱々しく浅く頻回である。

長い夜が過ぎてやっと空が白み始めた。
とりあえず夜は越したことになる。
今日の午後、担当医が春に脾臓肝臓摘出をした専門医と協議して対処を決めることになっている。
夜は越したけれど、担当医から電話がはいるまでまだ何時間もある。


緊急入院の準備だけしてスタンバイする。

夕方4時頃、「即入院」の連絡が来る。


実は、私はこの病院の中に入ったことがないのだが、入院させるなら絶対この病院がいいと主人が太鼓判を押す病院だ。外見は全く大したことない。家賃が安そうな町外れにあって、待合室だって何の豪華さもない、質素な印象だ。でもいったん受付の向こうに行くと、てきぱきと治療をこなしていくプロフェッショナル集団なのだそうだ。問診だけでも徹底していて、状態、食事、排尿排便などこと細かに情報を収集していく。これだけ徹底した問診は人間様の患者でもないのではないかと思われるほどだ。それだけスタッフの患者(動物)に対する愛情と動物医療に対する熱意が感じられる。この病院はERとICUを足したような施設なのだ。


入院後、早速CTをはじめ、一連の検査が行われた。
内出血の有無、消化管閉塞の有無、etc.

不幸中の幸いと言えるのだろうか、トレードマークにはない出血も消化管閉塞もなかった。
一言で言えば、性質の悪い何らかのウィルス感染というのが診断だ。
診断名だけ聞くと、拍子抜けというかあの大騒ぎは何だったのかということになりそうだが、逆に根本原因が不明なので見えないところに何か大きな問題が隠れている可能性は消すことができない。


脱水、衰弱状態にあるため観察入院になっているトレードマーク。
このまま、元気で無事に退院してくることを祈っている。