予習 胸部外科の単語帳作り

私は通訳の仕事用に単語帳を作ることは滅多にしないのだけれど、3週間後に控えた胸部外科学会に関しては、今、必至になって単語帳を作っている。これは日本語→英語の通訳業務になることが予定されているからだ。私は英訳が得意ではない。

胸部外科というのは、心臓、肺から始まって、血管系、食道、気管・気管支などが対象となる。小児、成人、高齢者を考えると先天性疾患もあればメタボ系の疾患もある。診療科目で言えば、心臓循環器系、肺・呼吸器系、消化器系も範疇になる。ざっと思いつくだけでもこんなに広い領域が対象となるのだ。とても専門用語が一夜漬けで覚えられるはずがない。

かといって、発表原稿は当日まで提供されない可能性が高く、抄録とそこから類推したネットでの論文検索が唯一の頼り。でもまだ抄録も提供されていないのでネット検索のしようがない。そもそもどんなテーマの論文が何件発表されるかだってわからないのである。

資料が提供されないことには慣れているので、あまりじたばたしないつもりだが、今回は鳴り物入りで登場することになっているので、通訳の出来が悪いと推薦してくださった先生の面子は丸潰れになってしまうので、絶対に失敗は許されない。その結果、悪あがきをすることになる。

単語帳を作らないひとつの理由に、作ってもあまり当日役に立たないという経験を多くしているからであるが、実は他に真の理由がある。単語帳を作らなければならない = その分野の専門知識に自信がないということなので、どんどん不安になるのである。わからないことがたくさん出てくる。ますます心配になる。悪循環の始まりだ。しかも英訳である。英語で複雑な文を組み立てるのは私にとっては難しい。

できれば発表原稿を事前にもらってそれをあらかじめ翻訳していって、当日講演者が何を喋ろうと無視して翻訳していった英文を淀みなく読み上げる、という奥の手を使いたくなる。

通訳の仕事は開き直りが肝心です。ドキドキしていたらきりがないから。