失せ物出ずる! 

昨年10月22日、私は大切な物を失くしてしまった。
その頃、出張の度に何か(それはお気に入りのイヤリングの片方だったり、鍵や手帳を入れた旅行用のポーチだったりした)を失くしていたので、一緒に自信まで失くしていた時だった。

21日の夜は、ちゃんと枕の上に置いて寝たのだ。22日はどうしたか全く記憶が無い。そして23日ホテルをチェックアウトした直後に気が付いた「スーツケースに詰めた覚えが無い」と。お昼過ぎにホテルに戻り、数時間前にチェックアウトした部屋を調べてもらった。大騒ぎをしてベッドの下やゴミ箱の中まで探してもらったのだ。清掃係りだけでは心配だと自分自身でも部屋まで行って探させて頂いた。やっぱり出てこない。前日、枕の上に置いたまま、お掃除の人がシートと一緒に丸めてしまったのだろうか。ホテルが業務委託しているランドリーの会社にまで問い合わせをしてもらった。

「うちは洗う前に一枚一枚シーツを広げています」と言うランドリー会社からの届出はなかった。

警察の遺失物届けも出したけれど、大阪で失くしたものを神奈川で届け出てもだめですねとおまわりさんに慰められた。数週間後に再度、ホテルに連絡してみたが、やっぱり朗報も新しい情報もなかった。
諦めきれないままに諦めた。主人は代わりのものをすぐに買ってくれたが、失くしたものと比べるとかなり見劣りがした。クリスマスには自分で代替品を買い求めたが、それでもやっぱり満足のいく品ではなかった。


ミネフネのせいだ。ミネフネの悪さは遂にここまで来た。
真面目に神社にお祓いに行くことすら考えた。だって本当に頻繁に物を失くし、しくじりが連続し、見えない天の力が働いているとしか思えなかったのですもの。


失くしたものはシルバーのロケット。主人の写真入りで出張に行く時は必ず身につけて行った。金額的には大騒ぎするような代物ではないが、最近、ロケット自体があまり売られておらず、そんな時間をかけてやっと見つけた中でデザインがとても気に入ったものだったのだ。


ホテルで失くしたのであれば、絶対に出てこないはずはないのだけどなぁと納得できない一方で、もうどうしようもないと諦めるしかなかった。可能性はほぼ無きに等しかったが、22日に打ち合わせを行ったオフィスの遺失物係りの連絡も聞いた。どうせそこで見つかるはずがないと確信していたので連絡をすることもなかった。


2月13日、ロケットを失くした時の出張先に再度やってきた。前回と同じホテルに泊まるのはあまりにも忍びなく、別なホテルに泊まった。2月16日にはオフィスビルの守衛室に拾得物の届出が無かったかどうかを聞きに行った。もちろん届出はなく、対応した守衛さんはあまり関心がなさそうに、本館の守衛室で問い合わせるように言った。本館の守衛さんは遺失物拾得物のリストを見てくれたけれど、届出はありませんとのこと。やっぱりね、と思いながら退室した。ここで出てこなければもう出てくるところはない。本当に諦めるしかなかった。


2月17日、アメリカに帰る日。ダメで元々と思い、オフィスに連絡してみた。居室で見つかった落し物は総務に届いていることもあると教えてもらった連絡先である。事情を説明したが、既に前日、私自身で守衛室に確認しているので期待はしていなかった。

小一時間もした頃であろうか、担当の方から連絡があった。
「見つかりましたよ。」
「えっ、本当ですか? そんなまさか、信じられない!」
本当に自分の耳を疑った。

11階の女性洗面所の棚の中に置いてあったそうだ。いつの頃からか洗面所がいい香りがすると彼女は思っており、私が「実はこのロケット、むき出しで落としたのではなく、ラベンダーの花を入れた白いサッシュの中に入れた状態で落としたのです」と言った時にすぐにピンときたのだそうだ。それでも確認しないうちに早合点で答えてもいけないと思い、電話を切った後すぐに洗面所を調べてくれたのだ。
ハンカチの中にでも包まっていたのだろう。手を拭く時にハンカチを広げ、落としたのに気が付かなかったに違いない。

ロケットだけなら誰かに拾われてそのままになってしまったかもしれない。サッシュにMickieと名前が書いてなければそのままゴミ箱に捨てられていたかもしれない。でもラベンダーの花にくるまれて、名前を書いたサッシュにはいっていたロケットは、他の女性の歯ブラシや化粧ポーチとともに、棚の中にちゃんと保管されていたのだった。

私にとっては奇跡の生還(かなりオーバー)を果たしてくれた宮崎さん、そして彼女を紹介してくれた早瀬さん、本当にどうもありがとう!
(喜びを隠せず主人に報告したら、「日本でなければありえない」と驚嘆していました。)