路上駐輪の恐怖

夕方6時前、東京メトロ飯田橋駅B1の地上出口で人を待っていた時のこと。

ガシャン、ガシャン、ガシャン、、、、ガシャン、ガシャン、ガシャン、、、。

何やら騒々しい音がした。その音の方を向くと、歩道に駐めてあった自転車がなぎ倒されている。
そこには若い男性がオロオロしながら自転車を起こそうとしていた。
それだけならば、私は知らん顔をしていたであろう。
けれども彼の手には視覚障害者の白い杖があったのだ。

他の歩道と比べると飯田橋界隈の歩道は幅が広い。
その歩道の半分を占拠して自転車が止めてある。
人通りの多い時は避けて通るのが大変なくらいだ。
目が不自由な彼は、人込みの中、止めてあった自転車に触れてしまったのだろう。
一台が倒れれば次々にドミノ倒しになる。


「自転車が10台くらい倒れてしまいましたよ。でもあなた目がお悪いのでしょう?大丈夫、私が片付けておいてあげます。」
「すみません。ありがとうございます。」


その男性はそのまま歩き去った。彼は怪我をしている様子はなかった。


倒れた自転車は、ハンドル同士が絡み合ってしまって起こすのも楽ではなかった。
目が見える私でさえ、手こずった。それでも自転車は軽いので、焦らずにやれば大したことは無い。

路上に止めてある自転車は、邪魔だと思ったことはあるけれど、こんなに危険なものだとは思わなかった。あの白い杖が車輪のスポークに挟まってしまったら、そのまま自転車の列へ倒れこむことだってあるだろう。歩道を占拠するような駐輪は考え物だ。

それにしても、通行人の皆さん。ちょっと冷たいよ。
困っている人がいるのに、皆知らん顔して通り過ぎて行ってしまうなんて。
面倒なことには拘わりたくないというのはあるけれど、今夜のこの事件はそんな性格のものではなかった。お互いに助け合おうよ。それでなくても、今、世の中厳しくて世知辛いことが多いのだから。